Sb Skateboard Journal TOP
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下北沢の駅から近い角のビル。狭い階段を曲がりながら登ると見えてくる鉄の扉。扉に埋め込まれた細長いガラスにベタベタ貼られたステッカー。その合間から中の様子を窺う。まだ来てないみたいだ。もう14時になろうかという時間なのに。しょうがないので向かいのビルの地下にある定食屋のランチタイムにギリギリで滑り込む。いつものメニューを平らげてショップに行ってみると電気が点いていた。やっぱりあった。気になっていたアイテムの数々。THRASHERでしか見たことないデッキや初めて見るカラーのOJウィール。そして現地のライブを収録したブートのカセットや当時のレコード屋ではまず見かけることはないハードコアパンクやスラッシュメタルのレコードの数々。US帰りの店長がショップに来ると聞いていたから、今回はどんなアイテムが入っているのか気になってしょうがなかった。ここにあるものは他のショップではなかなか見つけることができないものばかり。探していたMisfitsのレコードも入荷しているし、デッキやウィールやTシャツも山盛りになっている。店長が「おぅ、Epic Skateboardって知ってるか?」と声をかけてきて、USでPUSHEADと遊んだことやバックヤードBBQの話を聞いた。話を聞きながらSANTACRUZやDOGTOWNにALVAの最新デッキをチェックしていたが、最終的にはEpicのデッキを買った。ALVAのV-KICKと呼ばれたテールのコンケーブよりはるかにきつくV字にコンケーブがつけられたデッキ。USでもリリースされたばかりのものだった。なんだか自分が最先端に触れた気がしてニンマリしてしまう。デッキを新調するときには心が弾む。いつもより多めにもらったショップステッカーを大事に貼って、デッキはショップの奥に置き、店長が手荷物で持ち帰ってきたVHSテープの最新スケビを14インチの小さなテレビでチェックする。いつもの顔ぶれもポツポツと集まってきて、環7をバスにつかまって来た話やデッキが当たって前歯が折れた話に花が咲く。暗くなる前にデッキを組んで、週末仲間たちと行く約束をしていた蓮沼ツアーまでにコンケーブに慣れておこうと一人でスポットに向かう。 スポットに着くと仲間たちがすでに滑っていて、ちょうどこれから原宿のショップに行くという。僕もレールバーを買いたくて一緒に行くことにした。ショップに並んでいるアイテムをチェックしていると、スケートボードをこれから始めるというお客さんが矢継ぎ早に質問し始めた。スタッフは質問の1/3も答えずに「これでこれ付ければ間違いないから。あとはわかるようになってからまた考えな」と言い放つ。そのうち社長が「おい、ちょっとドアに鍵かけてビールを買ってこい!」と言い出す。デッキテープのロールにまだ日本に入りたてのスノーボードを乗せてテーブルにして、夕方のショップでドアの外にお客さんを待たせたままスタッフやライダーたちのプチ宴会が始まる。「お前も飲んでいいぞ」って言われてなんか仲間入りできた気がしたものだった。スケートボードを続けていって仲間が増えてくると、いろいろなショップに行く機会が増えていく。下町の名店にも魚の骨のTシャツを買いに行って、スタッフのみんなと仲良くなって通うようになったし、何かの用事で地方に行けば必ずスケートショップを探したものだった。色々なショップに行けば行くほどそのショップの個性や並んでいるアイテムの違いが楽しくて、何時間も狭いショップでウロウロできるほどスケートショップが大好きだった。20数年前のスケートボードショップって初めて行く人にはかなり敷居の高いところだった。「スケートボード=不良の遊び」というレッテルが貼られた頃で、初めて見た刺青も、初めてみたキッズスモーカーも、初めてみた鼻ピアスも、実際に僕の場合は全部スケートボードショップでの出来事だった。最新のスケートボードのトリックやファッションやスタイルの数々だけでなく、USで急激に進化するデッキやウィールやパーツの数々、スケートマガジンやビデオなど、どこにでもあるものではない何かに必ず出会えるのがスケートボードショップなのである。僕らが始めたスケートボードショップも今年でもう16年目になる。何度も笑って何度も泣いて、七転び八起きの16年。初めての人にも敷居を低く、一人でも多くの人にスケートボードの魅力を伝えたいと。そしてこの2011年の8月。出会いとご縁で僕らはまた新たなステップへ。僕らの中では大きくて新しい「初めて」のスタート。スケートショップってただデッキが並んでいるだけじゃないんだよ。おもちゃ屋さんのスケボーコーナーにはない、ワクワク、ドキドキできる「初めて」がいっぱいあるんだ。あなたのスケートボードはどこで手に入れましたか?

Akio Honma