話はいつも長くなる。議論や相談とは違う。白熱とか熱いっていうのでもない。ずうっと見ているという感じ。その目が睨みつけたり、屈託なく笑ったり、唾が飛び散ったり、歯をぎりぎりしたりする。定義はないな。邪魔者扱いされるくらいがいい。だからたまらなく死の際までいって生き生きしている。写真や世俗やいろんなものにまみれているとするならば、人にまみれて泣いて怒って笑って睨みつけているというのが一番しっくりくる。7月27日、青山ブックセンターへ。目はかっぴらいて口をあんぐりさせたまま。それでいて息を潜めていると、すごい匂いがしてくる。赤い血ととんがった角や牙。そんな中で、もうすぐなような気もするずっと 遠い夜明けを待っている。全然美しくなくて、とても美しい。あくまでも主観だけれど、そういう気持ちになった。写真家• 田附勝にずっとついて回るのだろうな、この匂いと血と、かの国は 。震災後において不適切な言葉かもしれないけれど、すばらしい一冊だった。恐ろしい津波は何もかもをのみこんでしまったかもしれないけれど、写真集「東北」の中にも命がある。遠い夜明けに祈りを捧げる生命の息吹がある。それを睨みつけ、生命の輪廻にまみれた、一方をレンズにもう一方をくしゃっと閉じた、神がかったようなやつの目尻と息づかいが静かに長々と脈打っている姿が浮かんでくる。