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TANGENT

路面店の中からはみ出して、通りに人だかりができる光景は、夏の専売特許のようになんとなく思っている。それは好きな映画のひとつスパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライト・シング」や北島敬三のフォトブック「NEWYORK」の印象が強いのかもしれない。ブルックリンの路地と比べる必要はないけれど、トーキョーの路地もまた人の喜怒哀楽が漂い、エネルギーを発している。そして、たぶんその喧噪がその街の夏らしさをかたちづくっている。熱帯夜。路地。人だかり。ビールとスケートボード。夜のとばりが下がるのに待ったをかけるように煌煌とたかれるライトに吸い寄せられるのは、なにもカブトムシなどだけではない。人もまたサマータイムを満喫していく。好きな光景だ。今回の路地は原宿のキャットストリート。その一角にあるXLARGE®で催されたレセプションは、マーク・ゴンザレスのTシャツ・リリースを記念したSb制作のZINEも並んだ。当日はスケートボーダーやいろんな人々が、ビール片手に熱帯夜のひとときをシェアしていた。通りにできた人だかりに紛れて、折ったり丸められたりしたZINEが見える。さらには路地も通りもひっくるめてストリートを滑り続ける、イーストコーストを代表するスケートボーダーのひとり、リッキー・オヨラと遭遇できたというのも感慨深かった。この夜の路地のエネルギーもきっとモチベーションになる。帰り道、ポケットに突っ込んでくしゃくしゃになったZINEを広げながら、友人とZINEについていろいろ話した昔のことを思い出した。"Small Packet"と殴り書きされた国際郵便。差出人はマーク・ゴンザレス。あれからだいぶ時が経った。喜怒哀楽のうちの喜びと楽しさ、そしてノスタルジーが潤んだ今回の路地の熱帯夜。ノスタルジーも夏には欠かせない。これもまた自分の大事なエレメント。ただ、怒りや哀しみは四季に関わらずこの国の路地にはこの先もずっとあることは忘れてはいけないけれど。つかのまの夏。ZINEを手に取ってくれたみなさん、関係者のみなさん、そしてずっとスケートし続けているマーク・ゴンザレス、Thank you so much!

Senichiro Ozawa