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旅支度。旅立ち。旅を言葉にして使うとなぜだかふわっと余韻が漂う。それはきっと旅の思い出や、旅に巡らせる思いが、人々の胸の引き出しにしまってあるからだろう。日常や惰性の中で、旅を求めている自分がいるからだろう。サーファーはまだ見ぬ波を求めて世界中の名もなきビーチを旅し続ける。スケートボーダーは誰も見向きもしないバージンスポットをイメージしながら街から街へシークし続ける。サーファーが自然を周遊する旅をするならば、スケートボーダーは言わば毎日小さなスポットシークという旅をしているようなものなのかもしれない。必然、記録される写真は都市部のストリートのアーバンやメタリックなロケーションが多くなり、そこに写り込む人々やキッズは軽装で洗練されていたりする。さて、SKATE ATOMたちの旅ははたしてどうだったのだろうか。旅の断片は、フォトグラファーやスケートボーダーから聞いてはいるけれど、その全貌はわかならい。この旅の主役のひとりでもあるデシの日常のままに、シークしてさらにシーク、ヒット・アンド・アウェイでメイクしていく旅なのか。それとも各ローカルの特色が色濃く出たりする紀行的なものなのか。なんせ47都道府県を駆け巡ったのだから、その断片と断片は偶然の連続だったにしろ、DVD化というフィナーレを迎える頃には必然的な物語が漂いはじめるのではないだろうか。スケートボードの生々しさをまざまざと見せつけられつつ、やはり旅の余韻に胸をざわざわとかき撫でられる作品になっているはずなのだ。旅というものは人々にそういうことをする。旅というものはスケートボーダーにそういうことをする。旅というものは必ず最後まで連れてってくれて、また旅立とうとする人間を増やしていく。だからきっと、SKATE ATOMの「JOURNEY」は、全国47都道府県でシークするスケートボーダーたちを旅に誘い、そして旅立とうとするスケートボーダーをプッシュしてくれるに違いない。現に、僕自身が旅に出たくてウズウズしている張本人。この作品を見て、旅支度完了としたいなと思っていたりする。

思えば、Sb Skateboard Journalの2012年の上半期イシュー「SKATEBOARD JOURNEY」号の巻頭を飾ったSKATE ATOMの旅の断片ページ。そのときに、デシを通じてフォトグラファーNORIを知った。偶然にも「旅」をテーマにする者同士が顔を合わせた。そして、その旅はTRIPでもなくTOURでもない、ましてやTRAVELでもなければVACATIONでもない。JOURNEYがいい。意味などはどうでもいいから、ジャーニーという響きと余韻がすべて。その余韻が旅の物語を最も漂わせてくれる気がした。だから、SKATE ATOMの47都道府県を巡る旅もやはり「JOURNEY」がしっくりくる。本当は作品説明なんてそれで十分だ、と思ったりしている。

最後にNORIについて僕の記録を少し。彼が撮るスケートボード写真は、アーバンでメタリックなロケーションだけでなく、旅人だからこそ切り取れる大自然とスケートボードのコンピレーションに仕上がっている。余韻に惹きつけられるように誰もが旅人になれる。そして、旅人になってまた家路について日常に戻っていく。しかし、NORIの日常はずっと旅人のままなのだ。旅し続けているのだ。だから、彼の写真には「旅に出たからこそ狙うぞ」というイキりがなく、「たまたまそこに降り立った渡り鳥」のような自然さがいつもある。スケートボードというけたましい違和感のカッチョイイ乗り物ですら取り込んでいってしまう。それはすなわち彼にはまだまだこの先も旅し続けるエネルギーが満ちあふれているということ。SKATE ATOMたちスケートボード旅団の「JOURNEY」はまだまだ続いていくということ。そんな風に考えてまた楽しんでいく。旅も、写真も、スケートボードも、好きなことはやめられないとまらない。「JOURNEY」、その余韻は僕らを自然に包み込んでいく。(Sb Skateboard Journal)